マターリな感じでカプ要素も薄いし内容もあまりありませんが!
短いしね!
ゆったりしたのが書きたかったの!←言い訳。
そんなでもいいって方は続きからどぞ。
大晦日の終夜運転も初日の出号の運行も無事に終わって、眠い目を擦りながらいつもより少し早めに宿舎に戻るとそこに常磐がいた。
さも当然のことかのように寛いでいた、オレの部屋で。炬燵に入って蜜柑の皮をむきながらテレビを見ている。テレビからは正月特有の面白いのかよくわからないお笑い番組が流れていた。
「……何してんだよ」
「あージュニアおかえりー。炬燵に入って蜜柑の皮をむきながらテレビ見てんだけど?」
いやいやいやそれは見ればわかる。
言いたいのはそういうことじゃなくてだな。
自分を落ち着ける為にとりあえず制服の上着を脱いで壁のハンガーかけにかける。今日はぎんっと空気が冷え込んでいたのでワイシャツ1枚になると体が心底冷えていることを実感した。自分の肌と肌が触れ合っただけで、体中に寒気が走る。ワイシャツの上にセーターを着て常磐に向き直る。
「大体どうやって入ったんだよ。鍵はかけていったはずだぞ」
「守衛さんにお願いしたらマスターキー貸してくれたよ」
………守衛の意味がねぇ。
まぁ同僚だしさして問題は無いと判断したのかもしれない。しかし今度注意しておこう。京浜東北あたりなら問題無いが、こいつや宇都宮あたりに自由に入られたら何をされるかわかったものじゃない。
「で、何か用なのか?」
「ハイ、これ」
言いながら常磐は炬燵のテーブルの上にビニール袋を置いた。どん、と何か固い音がする。袋の中を覗いてみると出てきたのは小豆の缶と切り餅だった。
「なんだよこれ」
「ジュニアいつもインスタントのばっかり食ってるからさ、正月くらい手作りすればいいと思って。土産!」
「…作ってくれる…ってわけではないんだな」
「は?なんでオレが作んの?」
首を傾げて言う。こいつのこういうところが常磐だと思う。
「……まぁ一応もらっておくよ…ありがとう…」
「感謝しろよなー」
溜息を吐いて小豆の缶を流し台に置く。先に寄ってきたコンビニの袋と一緒に。
コンビニの袋の中にはおにぎりが2個とインスタントの汁粉がひとつ。正月にしては粗末な昼食だ。だがそれすら食べている暇はなさそうである。朝食も短い休憩時間でかっこんだだけだから腹は空いているんだが。
「あ、ジュニアこっちの籠に蜜柑なくなったから取って」
常磐がのけ反りながら籠をこっちに差し出して来る。昨日の夜部屋を出たときは山にして積んであった筈だが、こいついつからここにいるんだ。常磐の前には蜜柑の皮が大量に積まれている。
常磐だって終夜運転していたし、いわきまで初日の出号を走らせていたわけだから仕事後ではあるのだろうけど。着ている服も制服だから、自分の部屋にも寄らずにここに来たということだろうか。部屋の隅に置いてある段ボールから熟れていそうな蜜柑を見繕って渡してやる。
「あの、常磐。オレもう休みたいんだけど…」
分かってはいたが一応発してみた言葉は案の定あっけなく流された。
「何だよ年寄りくさいなー。名前はジュニアなのに。あ、折角だから汁粉作れよ汁粉。オレも飲みたいしー」
蜜柑ばっかり飽きてきたんだよねー。
勝手な事を言いながら常磐はごろりと床に寝そべった。
明日は明日で初売りで混雑するし、それが終わればそろそろ帰京ラッシュが始まる。オレ達は正月と言えど休んでいる暇は無い。休めるときに休んで仕事に備えたいというのに。
常磐はまだまだ居座る気満々のようである。人の話を聞くような奴じゃないし(大体にしてJRにはそういう奴が多すぎる)、大人しく言うことを聞いたほうが早く休めそうだ。そう判断し、仕方なく鍋と網を戸棚の奥から引っ張り出した。網はずいぶん使っていなかったので軽く水洗いする。水道水の冷たさが荒れた指先にじんわりとした痛みをもたらした。
かこん、と音を立てて小豆の缶を開けると甘い香りが部屋に満ちた。小豆を火にかけ、暫しコンロの火で指先を暖める。
「餅は2個ねー」
くつくつと小豆が煮立つ音を聞いた常磐の楽しそうな声が背中越しに聞こえる。
言われた通りに餅を2個入れて作った汁粉を常磐の前に置く。常磐の向かいに自分の分のお椀も置いて、炬燵に足を入れた。炬燵の中で常磐は足を伸ばしている様で、少し奥に入れただけで足がぶつかった。
「もうちょっと向こういけよ」
「嫌だよ先に入ってたのオレだし」
ここオレの部屋なんだがそれは無視か。自由にも程がある。しかし言い返す気力もなく、縮こまるようにして座り直した。
「あージュニア初日の出見た?」
「業務中だぞ。見てる余裕なんてねぇよ」
「見ようと思えば車窓からちらっとでも見えんじゃん。なーんだ、すごい綺麗だったのになー。勿体ない」
「別に日の出なんていつでも見られるだろ」
「うわー情緒も何もない奴だな」
下らない話をしながら食べる手作りした汁粉はインスタントのものみたいに薄くなくて、しっかりとした甘みが舌に残る。仕事で疲れた体の芯に染みるようだった。少しだけ材料を用意してくれた常磐に感謝する気持ちが湧いて、ちらりと常磐の方を見遣る。
「あ、今更だけどあけましておめでと、ジュニア」
目が合った常磐が少し上目遣いで笑った。こいつが自分が可愛いのをわかっててこういう仕種をしてるのはわかってる。わかってるんだが。それでもやっぱり可愛いと思ってしまう自分は重症なのだろうか。
常磐は両手でお椀を持って最後の一口を煽っている。誰も見ていないテレビからはどこかで見たことのある気がするネタを披露する芸人の声が聞こえてくる。
まぁ、こんな正月も悪くないかもしれない。
あんなに冷え切っていた指先は、今は温かい。
その後しこたま飲まされて、翌日二日酔いで初売りラッシュというオプションさえ無ければ。
電車とかコスプレとかが好きなただのヲタクです。
基本マイナー思考でマイナー嗜好。
好きなものには全力です。
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