結婚おめでとうの超短文。

ついに結婚、おめでとう。
もう一度昔みたいに手を挟む本がきた。




午前2時。普段なら構内を点検し、シャッターをおろし鍵をかけ、明かりをおとして駅も寝静まっている時間だ。
勿論夜中に工事が行われていることも多いから一概には言えないが、いくらなんでもこんなに一斉に行われることはこの日しかないだろう。毎年今日はどの駅でも一斉にダイヤ改正のための準備を行っており、夜中でも騒がしかった。
時刻表を残さず張り替え、去年度の時間の入った掲示物はすべて撤去しなければならない。間違いは許されないため皆飛び回っている。
それに加え自分には他の路線とは違いやることが少し多かった。
案内板に書かれたひたち、ときわ、の文字。指でその文字をなぞる。昨日までそこに書かれていた横文字はもうない。
少しすっきりしてしまったその名前に、オレは小さく溜め息をついて口角を上に少しだけ歪めた。

「やっぱなんか、少しだけさみしーな」

昔は使っていた名前だというのに、完全にスーパー、フレッシュの名前が染み付いていたらしい。
はっ、と笑ってオレはその場に背を向けた。仕事はまだたんまりある。
まずは、昨日まで掲示を隠していた駅中のガムテープを剥ぎに行かなくては。
今日開業する、上野東京ラインのために。今頃アイツも東京駅で同じ作業をしているはずだ。オレの電車を迎え入れる準備だ。
ひひ、と小さく笑いが漏れた。
さあ、早くアイツに会いに行こう。自分のこの足で。
夜よ早く明けろ。