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電車とかコスプレとか同人とかいろいろ。
Posted by - 2024.11.29,Fri
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Posted by 雨宮 雛子 - 2010.10.31,Sun

はっぴーはろうぃーん。
てことで台風明けの本日ですがジュニ磐ハロウィン小話です。
書いてるうちに色々見失ってきたのでぐだぐだです←
あとハロウィン関係あるのかないのか…ちっともハロウィンっぽくないよっていう。


ほんとにぐだぐだです←2回言った。


そんなでもよければ続きからどぞー。




「とりっく おあ とりーと!」

扉を開けると黒いふさふさとした猫耳をつけて顔の横で「にゃあ」と招き猫のように手を丸める常磐がいた。どういう構造なのかわからないが、制服の上着の裾からは耳と同じ素材でできた尻尾が上向きにくるりとカールして時折ぱたぱたと動いている。猫みたいにきゅっと吊りあがった瞳にその猫耳と尻尾は似合っていた。正直よく似合っていた。
が、しかし、何のつもりだ。

「えーと…」          
          
反応に困ってとりあえず時計を見た。時間だけでなく日にちや曜日まで刻むその腕時計の日付表示は10月31日を指している。
そういうことか。しまった……オレは眉間に盛大に皺を寄せて苦渋の色を浮かべた。
昨日は関東に台風が接近していた。元々風速計の基準値が厳しいJR。更には海岸沿いを走るオレは早々に止まり、乗客の対応振り替え輸送の依頼に東奔西走していた。途中相模川を見に行ったが水面は荒れて到底渡れる様子になく、暫く乗客を閉じ込めることにもなった。夜になって速度規制をかけながらではあるが何とか復旧してからもダイヤの調整など恐ろしい程の仕事の山で、床についたのは午前3時も近かった。当然3時間も寝られるはずもなく疲労を残したまま起床し、さぁ出勤しようと扉を開けたらコレである。
くっきりとクマの浮き出た目を反らしたオレの顔を覗き込むように常磐は見を屈めた。もう一度、同じ言葉を口にする。

「とりっく おあ とりーと?」

10月31日、世間一般ではハロウィンなどという行事が行われている、らしい。そういえば去年も常磐はこうして朝っぱらからオレの部屋の扉を壊れんばかりの勢いで叩いたのだ。その時は丁度貰いものの饅頭があったからそれで誤魔化した。何故か渡したら盛大に舌打ちされたのは気の所為だと思いたい。
ハロウィンだなんて馴染みのないイベントのことなどすっかり忘れていた。しかしたとえ覚えていたとして昨日みたいな日に菓子など買いに行くヒマなどあるわけもなく、今用意できる食べ物といえば非常用の缶詰と一昨日作った煮物の残りくらいのものだ。
今この場で菓子が用意出来ないとわかったのだろう。常磐はにたり、という効果音がぴったりなくらいの歪んだ笑みをうかべた。

「ふぅぅぅぅん、ジュニアは悪戯のがいいんだぁ?物好きだねぇ?」

そう言う常磐は心底楽しそうだった。ほんとはこいつ菓子なんてどうでもいいんではないだろうか。

「ばっ…か!昨日は台風で…」

「そうだよねぇジュニア昨日は止まりっぱなしで大変だったもんねぇ。オレのことなんか忘れちゃうよねぇ。そっかぁ…」

慌てて言い訳をしようとすると常磐は少し俯きがちになり、双眸に寂寥の色を宿らせた。もちろんそんなものに騙されるほど浅い付き合いはしていない、つもりだ。常磐がこういう態度をとるなんて大抵腹に一物抱えているに決まっている。
しかしやはりこんな表情を見せられると少し罪悪感が湧いた。いやいや騙されるな、そう言い聞かせようとしてもちくちくと胸に刺さるものがある。わかっている、わかってはいるのだが。本当に悲しんでいるとしたらどうしよう、というほんの1%の不安が頭を過ぎる。

「常磐…」

「じゃあお菓子より悪戯ってことで!今日1日覚悟しといてね!」

ぱっと頭を上げた常磐の表情はそれはもういい笑顔だった。目をきゅうと細めて口角をぐっと持ち上げて笑う様は酒を飲んでるときでもよっぽど見せないような表情で、更にはオプションで頭に思わず触りたくなるようなふさふさした耳がついているわけで。
凶悪だ。
と、見蕩れている場合ではない。

「じゃ!」

常磐は敬礼をするときの様に頭に手を垂直に当てて軽くウインクすると、くるりと踵を返し尻尾を揺らしながら廊下を走り去った。

「ちょ…!待っ…!!」

制止の声など聞くはずもなく、遠ざかる背中を追い掛ける隙も与えずに、その姿は廊下の角に消えた。
 









はぁ。
大きなため息をひとつ。

「どうしたの東海道」

昼下がりの横浜駅の駅事務室。今から出かけるのは少しばかり遅いが帰宅するにはまだ早いそんな中ぶらりな時間帯。遅めの昼飯に齧りつきながら上から降ってきた湯呑みを受け取ると、香ばしいほうじ茶の香りが漂う。オレはもう一度ため息をついた。

「常磐がさぁ…」

「あーはいはいノロケなら聞きたくないよ」

自分から話を振ってきたクセに、京浜東北は心底鬱陶しそうに手を振った。不本意な言葉に手にしていたBLTサンドをテーブルの上に置いて、流しで自分の分の茶を淹れる京浜東北の方を振り返った。サンドイッチは外に買いに行く気力もなかったので駅構内で買ってきたものだ。サンドイッチとは言え外に出なくても温かいものが食べられるのは有難い。

「別にノロケじゃねぇよ」

「本人にノロケてるつもりがなくてもそう聞こえるものだよ」

言われて思わず押し黙る。

「まぁいいか。横でそわそわされ続けるのも迷惑なことこの上ないし。それでおさまるなら聞いてあげなくもないよ。で、どうしたの?」

 さらりとひどいことを言いながら京浜東北は向かいのソファに腰を下ろした。オレは朝の出来事をかい摘まんで説明する。京浜東北は話が終わるまで無言でほうじ茶を啜っていた。

「で、要は常磐がいつ何を仕掛けてくるかわからなくて落ち着かない、と」

「ああ。あいつのことだから仕事抜け出してくるのかもしれないし」

オレの話を簡潔に纏めて京浜東北は湯呑みを置いた。何か考えこむように空色の瞳を閉じ、そして一呼吸置いてくいっと視線を持ち上げる。

「やっぱりノロケじゃない」

「どこが!?」

「それがわからないなんて重症だよね、ほんと。何にしても常磐の性格を考慮して何の準備もしておかなかった東海道も悪いんじゃない。こんなうってつけのイベント、常磐が放っておくはずがないのに」

「そうかも、しんねーけどさ…」

なんだかんだ常磐はイベント好きだ。祭好き、と言ったほうが正しいのかもしれない。イベント毎があると大体何かしかけてくる。いつもは何が来てもいいように心構えはしておくのだが、今回はまだ自分に取って馴染みの薄いイベントな事と、そして台風が重なったことが災いした。

「まぁ精々注意してなよ。どうせ僕にどうにかできることでもないし」

「京浜東北話聞き出しといて薄情だな…」

「東海道が勝手に喋っただけじゃない。じゃ、僕は先に戻るから湯呑み洗っといてよね」

カコン、と流しに湯呑みを置くと京浜東北は駅事務室をでていった。オレは座っていた椅子の背もたれに体重を預ける。年期の入った古めかしい椅子はギィッと盛大に音を立てた。

「悪戯……ねぇ……」

一口に悪戯と言っても一体何をするというのだろう。ちっとも想像がつかない。いや想像がつきすぎると言った方が正しいか。常磐の行動は常日頃から一々人をからかうようなものばかりで、わざわざ悪戯をすると宣言してまでするようなことが思い浮かばないのだ。寝ている顔に落書きされたり頭にバケツを落とされたりなどのベタなものから、裏でこっそりあることないこと吹聴されてたり少し性質の悪いことまで大抵のことはされてきている。
悩んでも仕方ないのは分かっているのだがどうしても考えてしまう。しかしそうこうしているうちに休憩時間が終わりそうだった。プライベートのことで仕事に穴を空けるわけにはいかない。穴を開けそうな奴がいることが一番の悩みの種ではあるのだが。
湯呑みに残った茶を一気に飲み干して、オレは椅子から立ちあがった。








 
 
 しかし結局その日常磐が現れることはなく、オレは気を張っていた為変に疲労しきった体を引きずって自室へ帰ることになった。もしかして部屋に何かをされているのではないかと、恐る恐る電気を付けたが、朝部屋を出たときから何ひとつ変わった様子もない。何時も通りの見慣れた景色が広がっているだけだった。
 気が変わったのだろうか。常磐にしては珍しい。人をいじれることなら何が何でもやるくせに。大体1日中気にしていたオレはなんだったんだ。
 文句のひとつでも言ってやろうと、制服から部屋着に着替えて常磐の部屋へ足を向けた。扉の向こうからはテレビの音が聞こえてくるから在室だろう。
 ノックを2回、返事を待たずに扉を開ける。

「おい常磐」

「なにー?」

 床にごろりと転がった常磐の目はテレビに向けられていてこちらをちらりとも見ようとしなかった。それに更なる苛立ちを覚え、口調に刺を持たせて言う。

「悪戯、するんじゃなかったのか?こちとら気になって仕事に手がつかなかったんだぞ。ったく気まぐれもいい加減にしろよ」

 しかし明らかに怒っている風のオレに対して常磐の態度は何時も通り飄々としたものだった。ぱり、と手にしたスナック菓子を齧りながらさらりと言い放つ。

「もうしたよ」

「は!?」

 思いも寄らぬ常磐の言葉にオレは慌てて自分の周囲を見回した。とりたてて自分の身の周りには変わったところなどない。やはり部屋に何かされていたのだろうか。いや職場のロッカーか?しかしあらゆるところに注意を払っていたつもりだが特に何も異変はなかった。多分。
 困惑しながら常磐に目をやると今までずっとテレビに送っていた視線をこちらに向けてにっと笑った。

「うん、もうした」

 もう一度同じ台詞を口にした常磐はやけに楽しそうに直ぐに視線をテレビに戻した。

「どういうことだよ常磐」

 部屋に上がり込んで寝そべる常磐の横にしゃがみこむ。常磐は寝そべったままくる、と体を回転させ、仰向けになる。手を上にのばしてきたのでその手を取って、マッサージするようにゆるゆると握ってやる。

「んー、まあ分かんなければ分かんないでいんじゃね?されてないと思うならそっちのがいいだろうし」

「なんだよそれ。したのかしてないのかどっちだよ」

「だからしたって言ってんじゃん。ま、仕事とか運行に関わるようなことはしてないから安心しろよ」

「安心しろったってなぁ…気になるだろうが」

「じゃあお菓子」

「は?」

「何事にも対価は必要なんだぜー」

「対価っていうにはあまりにも一方的だろ…」

「ハロウィンってそんなもんじゃん?」

 けけけ、と意地悪そうに笑って見せる。まったく自分勝手にも程がある。オレはいい加減コイツを見限って良いような気がする。まぁ、そんなことはできるわけがないんだが。コイツに遠慮や配慮を求める方が無理なのだ。そんなことは初めから分かっていることだ。

「ほら、お前にはお菓子よりこっちだろ」

 部屋を出る直前に思いつきで掴んできた缶ビールと簡単なつまみを差し出す。どうせ何か要求されるような気はしていたのだ。何でこんなに至れり尽くせりしてやっているのだろうと偶に疑問に思う。

「えーこれだけーしけてやんのー」 

 もっと高い酒持ってこいよなー、と文句を言いつつも缶を受け取ったので、握ったままだった手を引っ張って体を起してやる。引き起こされると常磐はするりと手を引き抜いて、プルタブを開け、ビールを一気に喉に流し込んだ。
 ぷはーっ、とその見た目に似合わない息を吐いた常磐は本当に幸せそうな顔をしていた。こういう笑顔が見られるから、実はこいつの酒を飲んでる姿は嫌いじゃない。毎晩毎晩飲みすぎなのは何とかしてほしいと思うが。空になった缶をテーブルに置くと、常磐はオレの膝にダイブしてその向こうにあるビニール袋を取ろうと体を伸ばした。オレの膝に寝そべった常磐は、その姿勢のままでビニール袋の中を物色し、ビールをもう一缶と、チーズ鱈を取り出して封を開ける。どうやらどく気は無いらしい。仕方ないのでオレは常磐の頭をぽんと叩いて、少しでも楽な位置を探して、常磐の負担にならない程度に体をずらす。
 ふぅ、と小さく息を吐くのを感じ取ったのか、チーズ鱈を噛みながら常磐は唐突に言った。

「ほんとは何もしてないんだよね」

「は!?」

 思わず先と同じ間抜けな声を上げた。あれだけ引っ張っておいて何も、していない?いや確かに身に覚えはないのだが。普段が普段だ。オレが気付いてないだけで実は何かしていたという方がよっぽど信憑性があったのだ。今更覆されても到底信じることなどできない。

「だってぇー愛するジュニアにひどいことできるわけないじゃん?」

 こちらを見上げて口元を緩める常磐に一瞬だけどきりとするが、当然そんなもの心にもない言葉だということくらい分かっている。

「白々しいにも程があるわ…」

「ひでー。オレのこと信用できないの?」

「世界で一番出来ねぇよ」

「即答かよ」

 ちぇー、と呟いて常磐はまたつまみを頬張り始めた。矢張り本当のことを言う気はないらしい。ほんとに身勝手で我儘で自分中心な奴だ。

(なんでオレコイツのことすきなんだろうなぁ…)

 そんな疑問が頭をよぎる。
 けれど、膝に感じるこの体温を心地いいと思ってしまっている自分に嘘は吐けず、常磐の紫色の髪の毛に指を絡ませた。














まぁ何もしないことが悪戯でした、なんてジュニアが気付くわけもないよね、っていう。

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