「ようやく終わったー」
なんとか運行に目処がつき、現場も落ち着きを取り戻してきた。昨夜はあちこちで雪の影響でトラブルが出て寝る暇などなかった。雪で架線切断とかほんと勘弁していただきたい。車内で一夜を明かした客も多く、終止詫びに追われていた気がする。夜が明けて動き出した頃には係員も客もどちらもぐったり疲弊した顔をしていた。
まだ完全に遅れが解消されたわけではないがあとは引き継げば大丈夫だろう。これで帰って寝られる。報告書を出し終え、大きく伸びをすると体のあちこちがバキバキと鳴った。
外に出ると一面に積もった雪に昼下がりの太陽の光が反射して目に突き刺さった。徹夜の身にこの光は凶器だ。
額に手を当てて日除けにしながら雪道を歩く。十分に雪かきなどされていない箇所がそこここにあり、注意して歩かないと転びそうだ。
帰ったら熱い風呂に入って酒を一杯ひっかけて暖かい布団にくるまれて寝よう。
そんなことを考えながら、ざくりざくり、音を立てながら歩いていると、宿舎のほんの少し手前で黒いロングコートに身を包んだ長身の男が見えた。見慣れたその姿が誰なのかはすぐに分かった。足元が悪いからか随分とゆっくり歩いている。コートの裾には大分雪がついてしまって、きらきら輝きをはなっていた。
彼の前方に見える宿舎の玄関前はまだ雪の後、だれも出入りしていないのか、30㎝ほど雪が積もったまま足跡ひとつない。まっさらな雪。昨日は当然のごとく全員出勤していたから、どうやら帰るのはいちばんのりだったらしい。
体力などとうに尽きている。けれど。
これならだいじょうぶ。これなら、倒れても怪我しない。
そう思ったらいてもたってもいられず、常磐は口許に大きな笑みを浮かべ、そして駆けた。
「じゅっにあー!!」
背中に飛び付かれたジュニアがバランスを崩し、雪に大きな人型ができるまであと5秒。
電車とかコスプレとかが好きなただのヲタクです。
基本マイナー思考でマイナー嗜好。
好きなものには全力です。
Powered by "Samurai Factory"