ただの蛇足です。
立て続けにジュニ磐短文です。
淡月との合同誌、「色は廻る」のジュニ磐サイドのシーンの隙間。
いらねーよって思ったら無視してよいよ!
色は廻る読まないと何が何だかわかんない感じだと思います。
よろしい方は続きから↓
唐突に閉じた瞼の裏が白く染まった。うっすらと目を開けて視線を上にやる。
まだ暗闇の残る空の下、ホームの蛍光灯がこうこうと灯っている。もう始発の準備を始める時間なのだ。
ジュニアの肩に手を付いて密着した体を離すと、すうと入り込んできた空気が
まだじんわりと相手の体温の残る胸を冷やした。
「もう・・・時間だな・・・」
もう少ししたら此処にも駅員が点検にやってくるだろう。いつまでもこうしているわけにもいかない。少しずつ冷えていく体はもう一度このまま倒れ込んでしまえと訴えているけれど。
「行かないと」
「うん」
頷いたものの体はずっしりと重かった。それでも何とか膝の上から立ち上がってジュニアを見下ろす。ジュニアは口を一文字に結んで目を細めた。ふぅ、と小さく一息吐くと腰を上げる。だがなかなかその場から動こうとしない。
「行くんだろ?」
「・・・・・・ああ」
そんな短いやりとりをしてようやく横に並んで歩き出す。かつ、こつ、かつん。不揃いな足音がホームに響く。まだ人影の見られないホームはやけに広く感じた。
「お前今日勤務は?」
「んー10時からなんだけどどうすっかなー、これから帰ってまた出勤ってのもだりぃしちょっと早めてもらうかなー。ジュニアは?」
「オレは昼過ぎからだから一回部屋戻って寝るわ・・・昨日から此処に居たし」
「うっわ何?一晩物思いに耽ってたのかよ。ばかじゃね?」
「そうだな」
あっさり肯定されてしまうと返す言葉が無くてオレは口を噤んだ。
普段の何倍もの時間をかけてゆっくりと駅の構内を歩く。時折すれ違う駅員がオレの姿を確認して不思議そうな顔をし、しかし何も言わずに小さく会釈をして通り過ぎていく。ジュニアはともかくオレがこんな早朝に東京駅にいることなんてあるはずがないと言っても差し支えがないのだ。
(今は、まだ)
言葉は少なくただ足音ががらんどうの構内に響く。先程の薄暗さとは打って変わって蛍光灯の無機質な明かりで照らされたそこは、暗闇に慣れた目には少し眩しい。そうだ、これは光の所為で眩しいだけだ。目をちり、と焼くような感覚がなんなのか、認めたくはなかった。
「あ、オレこっちだから」
バックヤードに続く扉の前に立ち、くるり、と足をジュニアの方に向ける。
「ああ」
「じゃあ、またな」
また。
また、とはいつだろう。
自分で言いつつその意味を考えながら、だけれどそんなぐるぐるしたものは覆い隠して手を振ってにいと笑顔を浮かべてやる。だがジュニアは口を引き結んだまま、その場に立ち尽くしていた。
まっすぐこちらを見るジュニアの視線を感じながら扉を抜ける。後ろでに扉を閉めた瞬間、体中から汗が吹き出た。力の抜けた体を支えきれずに背中を扉に預け、ずるずると崩れ落ちた。
何だ、これ。
なんなんだ、これ。
体が熱い。
引き寄せられた腰が、重ねられた唇が熱い。
抱きしめられたとか、キスをされたとか、たったそれだけのことで動揺するなんてどうかしてる。そんなの酔ってやられたことだって以前にもあった。
(でも・・・でもさっき・・・)
あいつは、好きだと言った。
「あー・・・!!」
頭をぐしゃぐしゃにかきむしり、オレはその場で頭を抱えた。なんだこれ。くそう、心臓がうるさい。心臓だけじゃない。ずくんずくんと体中が脈打っているのがわかるくらいだ。ちくしょうしずましやがれ。
玉砕覚悟だったんだ。こんな結果、あるわけないと思ってた。いちばんあり得ねぇ展開だ。
もしかしたらこれは夢なんじゃないだろうか。あんな風にもやもやしたまま眠りについたから、自分に都合の良い夢でも見てんじゃねぇの?だったら早く覚めろ。夢でだけ幸せになるなんてそんなの虚しいだけじゃねーか。
だってジュニアがオレのことすきだなんてそんなことあるわけない。あのお堅いジュニアだぜ?オレみたいに不真面目で、身勝手で、人をバカにして、ひどい言葉を吐き捨てるような奴を、あのジュニアが好きになるわけねーじゃん。
なるわけ・・・・・・そう考えつつ、自分で気が付いた。
じゃあ、オレがジュニアを好きな理由は?
理由は、ある。そんなこっぱずかしいこと絶対に誰かになんて言いたくはないけれど。でも、つまりは、そういうことなのか?オレがジュニアに抱いている感情と、同じなのか?いちいち細かいことに口うるさいところも、カッコつけのくせに詰めが甘くてぜんぜんカッコよくないところも、からかうと嫌悪感を露わに眉根に皺を寄せる表情も、そのてのひらの温度も、ダメなところも全部含めて、欲しくて溜まらないこの感情と、同じだっていうんだろうか。
全部が好きだなんてそんなことは勿論無い。
むしろ気に入らないところの方が多い。
だけど、その隣に自分以外の誰かがいるのは嫌だ。誰かに譲る気なんて、ないんだ。
くそう、こんなの夢だろ?なのに何で一向に目が覚めやがらねぇ。
・・・そうだ今日の夜はジュニアを飯に誘おう。
今のが夢だったというのなら、きっと気まずい顔をして、あの夜のことをもう一度謝られるだろうか。
夢じゃないというのなら、どうなるのだろう。
ああもうこんな面倒くさいこと考えさせるなんてただじゃおかねぇ。覚悟してろ。
夢だったとしても、もう一回言うまでだ。
夢になんか、したくないから。
電車とかコスプレとかが好きなただのヲタクです。
基本マイナー思考でマイナー嗜好。
好きなものには全力です。
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